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2025年新年度挨拶
盛夏の候、皆様におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は弊社事業に格別のご理解とご支援を賜り、心より厚く御礼申し上げます。
新たな期のスタートにあたり、これまでの歩みを振り返りつつ、今後の事業展開への抱負をお伝えさせていただきたく、ご挨拶申し上げます。
昨年から「令和の米騒動」と呼ばれる深刻な米価高騰や米不足がおきています。我が国の食料の根幹である主食用米において、政府備蓄米放出という緊急対応を余儀なくされる異常事態となりました。
一連の情勢において、農家・農業会社が既存システムの延長で農業経営を安定的に続けることは非常に難しく、イノベーション型の思考で状況を乗り越えていかなくてはならないとより一層感じております。
このような認識のもと、弊社では事業を通して持続可能で競争力のある農業経営モデルの構築に取り組んでまいります。
さて、弊社では昨期「グリーンエナジー事業」を立ち上げました。年初のご挨拶でもご紹介したとおり、グリーンエナジー事業を"農業に関連するエネルギーの生産・消費の効率化をベースとした周辺事業"と定義し、持続可能な農業経営を自社で体現、日本中への展開を目指しております。
その第一歩として、2025年度に弊社植物工場・美里グリーンベースの隣接地に約4ヘクタールの営農型太陽光発電設備を建設いたします。設計は、営農者および地域住民、生態系への配慮した弊社オリジナルとしております。本施設の完成により、美里グリーンベースの電力の約70%を再生可能エネルギーで代用する形となり、同時に連携する近隣の農業者への電力提供を予定しております。
本施設を第一弾として、営農型太陽光発電設備によるエネルギー生産×農業生産×農業施設(植物工場)というモデルを構築しますが、近く食品残渣の肥料化事業など、新たなモデルも実装し、将来は他の農業者・他産業への先進的なモデルとして展開する準備を進めております。
昨年4月に改正・施行された働き方改革関連法によるトラックドライバーの時間外労働規制、いわゆる「物流2024年問題」により、業界全体で輸送能力不足が深刻な課題となっております。これにより従来どおりの物流体制では立ちいかない物流会社も出ているとお聞きしています。
食料を安定的に消費者の皆様にお届けするために、物流はまさにセンターピンとなる重要な機能です。これまで自社物流を中心に展開してまいりましたが、取引先様が多様化するに従って、この新たな環境への抜本的な対応が不可欠となりました。
2024年5月に茨城県境町にて物流拠点「グリーンステーション境」の運用を開始いたしました。また、これまで自社の物流部門がカバーしてきた配送体制を見直し、複数の配送業者様との戦略的な連携のもと、北海道から関西エリアまでをカバーする配送ネットワークを整備しております。まだ道半ばではありますが、今後とも多様なお客様のニーズに安定した商品をご提供できるよう、今期も体制を強化し、変化する物流環境に対応した持続可能な配送システムの実現を目指してまいります。
さて、2024年11月頃より野菜価格の極端な変動が世間を賑わせました。キャベツが1玉1,000円を超える値がついたというニュースも話題となった一方、つい先月、6月頃には供給過多から相場割れを起こし、1玉20円で投げ売りをしているスーパーも見られました。同じ1玉を作るにも掛かる経費は変わらない(むしろ増加傾向)ですから、1年もせずに価格が50分の1となるビジネスは、中小規模の農業経営者にとって非常に厳しい市場環境です。
従来、野菜の相場にはハイシーズン・ミドルシーズン・ローシーズンの3段階があるとされてきましたが、気候変動(短い梅雨・集中豪雨・降雹)や各生産者・流通業者による相場の読み合いが深まった結果、現在は極端なハイシーズンとローシーズンの二極化が進んでおります。そしてこの傾向は今後さらに顕著になると予測しております。
相場変動に依存しない経営体制の構築はもちろんのことですが、通年での安定出荷を維持するためには全国の農業者との連携がより重要であり、その戦略もこれまで以上に高度化させていく必要があります。弊社でも露地栽培の旬の時期と植物工場での安定生産を組み合わせた産地リレー体制を戦略的に設計しつつ、全国の農業者連携をさらに深め、このような環境を乗りこなすのではなく、市場をコントロールし、前述のグリーンエナジー事業と掛け合わせて「農業者・生産者が儲かる世界」の実現を目指します。
更に、弊社の中期事業計画として、冷凍加工工場の新設を予定しております。前述したような市場環境で農業者が安定して稼ぎ続けるためには、野菜の賞味期限を延長させることもセットで考えていく必要があります。近年、食生活の多様化や共働き世帯の増加、さらにはコロナ禍を経た消費者の食品保存への意識向上により、冷凍食品市場は拡大の一途を辿っております。このような市場環境の変化を捉えた新たな取り組みです。
舞台ファームが冷凍食品加工工場を持つことで、弊社と連携する農業者から安定的に農作物の仕入れを行うことができ、季節変動に対応した冷凍野菜の製造により、安定的な収益基盤を構築いたします。冷凍加工では大量の電気を使用するため、前述のグリーンエナジー事業との相乗効果により、環境負荷を最小限に抑えた持続可能な加工体制の実現を目指しております。詳細につきましては近日またご報告申し上げたいと思います。
前述したグリーンエナジー事業は、まさに農業の未来設計図そのものだと考えております。昨今のAI技術の飛躍的な進展を鑑みると、私は10年後、少なくとも15年以内には間違いなくロボットによる農業の自動化が実現すると確信しております。その際に最も重要となるのがエネルギーです。農業生産の現場に最も効率的にエネルギーを導入するため、足元では「グリーンエナジー×米づくり」「グリーンエナジー×野菜作り」「グリーンエナジー×冷凍加工」など、様々な分野との融合を進めてまいります。
そして、我々の目指すビジョンを実現するためには、人材やロボットをマネジメントする"優れたリーダーシップ"を持った人材が不可欠です。日本では特に一次産業における人材不足は喫緊の課題であり、外国人労働者のご活躍も右肩上がりで増えております。舞台ファームにおきましても、美里グリーンベースではインド人の工場長がご活躍いただいておりますが、今後は海外のリーダー人材が現場をマネジメントする例が増えていくと考えております。
言語の壁を越えたマネジメントシステムの構築や人材育成機関の設立を通じて、「会社が人材に合わせるのではなく、人材に会社が合わせる」という柔軟な思考のもと、グリーンカラー人材を社会に輩出し、農業の複合的経営が求められる時代に対応した人材システムを構築してまいります。
来る2025年7月14日には、東京ミッドタウン八重洲において、我々舞台ファームの3年先・5年先・10年先の事業設計およびビジョンを発表する場を設けさせていただきます。私が今から5年前に予想していた世界よりもはるかに早く環境が変化する中、地球温暖化による生産量の偏り、集中豪雨などの気候変動と、農業者を取り巻く環境はもはや個人レベルではカバーしきれない状況となっているように思います。
我々舞台ファームは、農業者が互いに削り合うような競争関係ではなく、共創関係として日本の食料供給を持続可能なものにするべく、本年も奔走していく所存です。
「未来の美味しいを"共に"創る。」
関係各所の皆様には、引き続きご指導ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
2025年7月1日
株式会社舞台ファーム
代表取締役社長 針生信夫
